自分では使用した記憶がないのにクレジットカードの請求がくる、SNSから勝手に投稿される……などの被害に遭った場合、パソコンを乗っ取られている可能性があります。
パソコンの「乗っ取り」被害に遭うと、金銭的な被害だけではなく、パソコンに内蔵または接続されているカメラで「盗撮」され、覗き見されたり個人情報をばらまかれてしまう危険性もあります。
今回は、パソコンの乗っ取り(ハッキング)の基礎知識やカメラで盗撮されない対処法などについて、解説します。
目次
パソコンの乗っ取り(ハッキング)とは?
第三者によりパソコンに侵入され、所有者のしらない間にパソコンを操作されたり、勝手に動作したり、操作不能にされることなどをパソコンの「乗っ取り」と呼びます。
「乗っ取り」により個人情報を盗んで勝手に使用したり、カメラから盗撮して覗き見や個人情報を漏洩させるなどの犯罪を行うことが可能になってしまいます。
パソコンの乗っ取りの目的
個人に対するパソコンの乗っ取りは詐欺や脅迫目的が多く、クレジットカードや銀行のIDやパスワードを盗み不正に使用します。
また、中にはカメラを利用して盗撮を行い、さらにそれをもとにパソコンの所有者を脅迫し、金銭を要求することもあるようです。
大きなサーバーを攻撃する目的で、パソコンを乗っ取る場合もあります。
サイバー攻撃では一度に多数のパソコンを乗っ取り、同時に攻撃をしかけてサーバーやネットワークをダウンさせようとします。
また、サイバー攻撃の罪をなすりつけようと乗っ取ったパソコンから攻撃する事例や、顧客データや機密情報を盗みとる目的で企業のパソコンを乗っ取る事例も増えています。
パソコンの乗っ取るマルウェア
パソコンの乗っ取りはマルウェア※を利用した被害が多く、第三者が不正に侵入させたプログラムが実行されることで、パソコン内の情報が抜き取られ外部に流出します。
不正プログラムの内容によっては遠隔操作が可能で、所有者が使用する時間は不正な動きをしないため、乗っ取られたことに気付かないケースも少なくありません。
※マルウェアとは
「マルウェア」とはパソコンに侵入する不正プログラムを総称したもので、「広義のウイルス」とも呼びます。
ウイルスと同じニュアンスで使用されることが多いですが、ウイルスはマルウェアの一種であるため、マルウェアが上位概念であると捉えられます。
引用:McAfee 公式ブログ
パソコンを乗っ取るマルウェアは、以下の経路から感染することが多く見られます。
- Webサイトの閲覧
- メールの添付ファイルやHTMLスクリプト
- ダウンロードしたアプリ
- ファイル共有ソフト
- USBメモリなどの記録媒体
Webサイトの閲覧
Webブラウザには各種のプログラムを実行できる機能が備わっているため、ホームページ上でさまざまな処理を実現できますが、このプログラムの脆弱性を狙い、Webサイト内にマルウェアが埋め込まれていることがあります。
以前は怪しいサイトさえ閲覧しなければウイルス感染のリスクを防げるとされていましたが、現在では大手サイトや公式サイトが不正侵入され、マルウェアが仕込まれるケースも増えているようです。
そのため、Webサイトを閲覧しているだけでウイルスに感染し、パソコンを乗っ取られてしまうことがあります。
メールの添付ファイルやHTMLスクリプト
マルウェアの主な感染経路のひとつとされているのが、メールです。
悪意のあるプログラムが添付されており、確認せずに開いてしまうとウイルスに感染します。
以前はメールがテキスト形式だったため、添付ファイルによるウイルスの感染が多く見られましたが、近年はHTML形式のメールが増えたことから、スクリプト※による感染も増加しています。
※機械語への変換などを省略・自動化し、ソースコードの記述のみですぐに実行できるプログラムのこと
スクリプトの場合、メールソフトによって自動実行されるため、プレビューだけでも感染する危険があります。
ダウンロードしたアプリ
無料のアプリケーションを配布するように見せかけ、悪意のあるプログラムをインストールさせるケースです。
マルウェアの一種であるトロイの木馬はアプリケーションに偽装し、パソコンに侵入してきます。
無料のセキュリティソフトやメディアプレイヤーなど、正規のアプリを装い侵入しようとするケースもあるため、サイトの安全性を確認してからインストールすることが大切です。
ファイル共有ソフト
インターネットを使用してファイルをやり取りするソフトウェアのことを、ファイル共有ソフトと呼びます。
不特定多数のユーザーがファイルを自由に公開できるため、偽装したファイルにマルウェアが仕込まれ、ダウンロードすることで感染することがあります。
USBメモリなどの記録媒体
マルウェアが仕込まれたUSBメモリなどの記録媒体をパソコンに差し込むと、自動的にプログラムが実行し、パソコンが乗っ取られるケースです。
また、マルウェアに感染したパソコンにほかのUSBメモリを差し込むと、新たにウイルスがUSBへコピーされ、被害を拡大させます。
パソコンの乗っ取り(ハッキング)がもたらす被害の事例
パソコンのソフトウェアのセキュリティホール(欠陥)を探り当て、悪意のある第三者に不正侵入されるとパソコンは乗っ取りに遭ってしまい、以下のような被害がもたらされます。
- カメラを悪用して盗撮される
- パソコン内の情報を盗まれる
- パソコンを「踏み台」にされる
カメラを悪用して盗撮される
パソコンに侵入したマルウェアにより、ネットワークを介してカメラを乗っ取られる事例も少なくありません。
最近はビデオ通話や見守りカメラ、防犯用などでWebカメラが使用されており、パソコンに接続して利用する人も増えています。
非常に便利なツールである一方、カメラを乗っ取られてしまうと私生活を盗撮されるなどの危険性もあります。
企業のパソコン乗っ取りの場合、機密情報を盗み取る目的で盗撮されるケースが多いですが、個人の場合は所有者のプライバシーを覗き見るストーカー目的で盗撮を行うことも多いようです。
また、盗撮した画像や動画をもとに、脅迫して金銭を奪い取る犯罪も増えています。
パソコン内の情報を盗まれる
パソコンに侵入するマルウェアにはバックドア(裏口)を作成するタイプも多く、所有者の気付かない間に遠隔操作で情報を盗み、悪事を働かれてしまうことがあります。
普段使用しているショッピングサイトのIDやパスワード、クレジットカード番号などを盗み取られたり、メールの内容を閲覧されて情報を盗み取られます。
盗んだ情報をもとに有料サービスを利用されたり、勝手に買い物をされるなど金銭的な被害を受けます。
引用:ノートン ブログ
パソコンを「踏み台」にされる
「踏み台」とは、不正侵入したパソコンからさらにほかのパソコンへ不正侵入し、所有者のしらないところで勝手にほかのパソコンに攻撃を行うことです。
迷惑メールを配信する、サイバー攻撃をかけるなどの命令を受け、しらない間に実行してしまいます。
また、感染したパソコンを踏み台に、ネットワークを介してほかのパソコンに感染を拡大させることも可能です。
パソコンが踏み台にされると所有者が加害者と判断され、プロバイダや回線業者から接続停止を受けたり、場合によっては犯罪に巻き込まれてしまう場合もあります。
引用:ノートン ブログ
パソコンの乗っ取り(ハッキング)を防ぐ方法・対策
パソコンの乗っ取りの被害に遭わないために、所有者側で以下のような対策を行いましょう。
- パスワード管理を強化する
- 怪しいメールは開かない
- 怪しいアプリはダウンロードしない
- セキュリティソフトを導入する
- 無線LANのセキュリティを強化する
- Windows Updateを定期的に行う
パスワード管理を強化する
パスワードの管理に関して、以下のようなポイントを押さえることで、乗っ取りの被害を防止・抑止することが可能です。
・パスワードを第三者に教えない
・すぐに見つかる場所に保存しない
・複雑なパスワードを設定する
・利用する都度パスワードを変更する
・定期的にパスワードを変更する
また、パスワードをパソコンに保存する場合、デスクトップなどの分かりやすい場所に保存することは厳禁です。
外部の記録媒体に保存するとともに、記録媒体そのものにパスワードをかけておくとさらにセキュリティが強化されます。
怪しいメールは開かない
身に覚えのないメールが届いた場合、乗っ取り目的のマルウェアが仕組まれている可能性があります。
添付ファイルを開くことで不正なプログラムが実行されたり、メール本文のアドレスをクリックことでウイルスに感染し、パソコンを乗っ取られてしまいます。
現在も添付ファイルにマルウェアを仕込む手口は多いため、不審なメールは開かずにそのまま削除しましょう。
怪しいアプリはダウンロードしない
最近では無料のアプリケーションが数多く配布されていますが、安全性の確認は自己責任です。
マルウェアによってはアプリケーションに偽装するタイプもあり、大手Webサイトになりすましたサイトからダウンロードさせようとするケースも増えています。
アプリをダウンロードする際は、必ずサイトの信憑性やアドレスの正誤などを確かめなくてはなりません。
出所の不明なアプリは、絶対にパソコンへインストールしないようにしましょう。
セキュリティソフトを導入する
もっとも一般的で大きくリスクを軽減できるのが、セキュリティソフトの導入です。
セキュリティソフトはウイルスに感染したファイルを検出して駆除したり、メールやブラウザからの感染をブロックしてくれます。
ウイルスは日々新種が発生しているため100%防ぐことができるとはいいきれませんが、セキュリティソフトを常に最新の状態にして定期的にスキャンを実行することで、高い確率で乗っ取りの被害を防げます。
無線LANのセキュリティを強化する
無線LANを利用している場合、セキュリティの設定をしていない/初期設定のまま利用していると、しらぬ間に第三者に接続され、LAN内へ不正にアクセスされたり、パソコンが乗っ取られて踏み台にされていることがあります。
無線LAN接続でパソコンを使用する場合は、必ず利用を開始する前にセキュリティの設定を行ってください。
Windows Updateを定期的に行う
パソコンの乗っ取りを行うウイルスはシステムの脆弱性を狙って侵入してくるため、OSや追加ソフトウェアのアップデートを定期的に行うことが必要です。
Windows Updateは新しい機能の追加だけでなく、不具合を修正する目的も多いため、アップデートすることで脆弱性が解消され、乗っ取りの被害を防げます。
パソコンの乗っ取りによるカメラの盗撮を防ぐ方法
パソコンの乗っ取り被害の中でも、盗撮は特に精神的なダメージを受けやすいため、強固なセキュリティ対策が必要です。
以下を参考に、第三者による不正なカメラの盗撮を防止しましょう。
- カメラの設定を無効にする
- カメラとパソコンの接続を遮断する
- カメラに目隠しをする
カメラの設定を無効にする
パソコンでカメラの機能を無効に設定しておくと、盗撮を防ぐことが可能です。
- Windowsロゴを右クリックし、一覧の中から「デバイスマネージャー」をクリックします。
- 「デバイスマネージャー」画面が表示されたら、「カメラ」横の「>」をクリックします。
- 「カメラ」のデバイス一覧が表示されたら、該当のデバイスを右クリックし、一覧の中から「デバイスを無効にする」をクリックすれば完了です。
カメラとパソコンの接続を遮断する
有線接続の外付けカメラを利用している場合、ケーブルを抜いておくことで盗撮対策になります。
接続を遮断するとカメラそのものが利用できないため、盗撮することができません。
カメラに目隠しをする
パソコン初心者の場合、設定がうまくいかずそのまま放置することもあるでしょう。
複雑なパソコンの設定なしで簡単に盗撮防止として役立つのが、カメラの目隠しです。
カメラにガムテープやシールなどを貼り、レンズを防ぐことで盗撮の危険から身を守れます。
上から厚手の布をかぶすだけでも、盗撮予防として利用できます。
まとめ
パソコンの乗っ取りや、乗っ取りによるカメラからの盗撮被害を防止するためには、更新プログラムを適用する、パスワードを変更するなど定期的に対策や、カメラをオフにするなどの対処が必要です。
しかしながら、マルウェアの手口は日々進化しているため、セキュリティ対策は万全のつもりでも確実に対処することは難しいかもしれません。
パソコンが乗っ取りに遭っていると感じた場合、セキュリティソフトでスキャンを実行しましょう。
それでも現象が改善されないのであれば、すぐにパソコン修理業者へ相談することをおすすめします。
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※1 2023年8月末時点 日本PCサービス株式会社調べ
※2 2021年11月時点 2万6303人調査 調査主体:日本PCサービス株式会社 調査実施機関:株式会社インテージ
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